[EVE活2022] カプセラ調査FILE No. 0559 -chaosmethods11
私はThomas.H.Murakami
New Edenでの人道支援で知られるSoE(サーバントシスターズオブイヴ)の学術研究員である。
まあ「表向きは」であるが。
実際は各地での情勢調査名目で、所謂、諜報活動も行っており、私もその一員である。以下に調査内容の詳細を記述する。
今回の調査対象者は chaosmethods11
日系コーポで知られるNACHOアライアンスの社員である。
他のケースと同様に、New Edenでの情勢調査として彼に取材を申し込んだ。断られることもある案件だが、彼はそっけない返事で取材の許可を得ることができた。
”ステーションロビーのバーの27番テーブルにて待て”
YC123年11月3日のことであった。
彼が待ち合わせ場所に指定したのは、Jitaからほど近いステーションの、よくあるバーのひとつだった。
彼が現れたのは待ち合わせ指定時刻を幾らか過ぎてからだった。
”あんたがムラカミさんだな? 俺がchaosmethods11だ。宜しくな”
そう言うとその男は握手を求めてきた
”待たせちまったな。あんたの生体認証情報の照会に時間がかかっちまってな。 なかなか面白そうな仕事してんだな”
そう言うと彼はニコッと笑ってみせた。
私の素性はお見通しだ、という一種の警告だろうか
”おっと、気分を悪くさせちまったかな?まぁ俺の奢りだ。1杯やってくれ”
そう言って彼はアルコールをオーダーすると
”お近づきの印に、乾杯”
と言って美味しそうに口をつけた。私もそれに続いた。
聞き慣れない言葉だった。
何でも日系カプセラのコミュニティの中で、初対面の者同士の挨拶のような言葉らしい。彼自身もこの言葉の詳しい意味などは知らない、とあっけらかんに言ってみせた。
そうして彼への取材が始まっていった。
彼の印象として、上背は私よりも低く、しかし体型はがっしりとしていた。何でも彼の生まれはカルダリの田舎の星系で、当初はカルダリ海軍に従軍していたらしい。ただ、任務中に重傷を負い、そのまま除隊した経歴があるそうだ。
その後は心機一転、カプセラとしての生活を始め、日系コミュニティの伝手を使ってNACHOアライアンスに入社したこと。
今は海軍時代のコネもあって、ガリスタスを始めNew Edenの海賊勢力の討伐の仕事や、海軍が直接関与できないような裏方の任務を引き受けたりしていること
またあるときは生活の為にアステロイド・ベルトで採掘をすることもあれば、辺境の星系に探検に出かけ、貴重な資源や物資を持ち帰り、Jitaのマーケットに並べていることなどを、身振り手振りも加えて楽しそうに話してくれた。
海軍勤務時代は堅苦しい雰囲気だったが、カプセラとなってからは比較的自由に活動が出来るようになって、今の生活を満喫しているとのことだった
話も弾み、打ち解けてきたように感じた私は、いよいよ今回の取材で私が最も興味がある部分を聞き出してみることにした
「カプセラの採掘船や探検船が、活動中に消息不明になる事件や事故はNew Eden では珍しいことではありません。ただ、そういった宙域で稀にNACHOアライアンス関係者と思われる艦船が目撃されたり、痕跡が見つかることがあります。これについては何か知っていることはありますか?」
”知らねーな。そういう事故はウチでもよくあることだし、ウチの船だって偶々そこで活動していただけ、とかなんじゃないかな”
先程までと打って変わって、冷ややかな返答だった
この男が「何か」を隠そうとしているのを私が確信するのに、十分な反応であった。
「そうですか。またカプセラの企業同士での権益を巡って、紛争や武力衝突が日常茶飯事であるNew Edenですが、最近武装したNACHO艦隊が目撃される事例が度々・・・」
”なぁムラキさんよ、自分や仲間の身を守る為には、時には話し合いや交渉だけじゃ通用しないってのは分かってるよな。
また資産やISKだって、生きていくにゃ必要なもんだ。
自分や仲間の利益を守ることは、命を守ることと同じ位重要なことだ”
”好む好まざるに関わらず、New Edenの闇の中を飛び続けるには、それだけの実力と覚悟も必要ってことなんじゃねーかな。
まぁ今日は楽しかったぜ。ありがとよ。”
chaosmethods11 はそう言うと、後ろ姿で手を振りながら、私の質問を最後まで聞かずにバーを後にしてしまった。
彼の飲みかけのアルコールと、私の「ムラカミです・・・」
という囁きがそこに残されていた。
バーを後にしたchaosmethods11は、自分の船へと急いでいた。
彼の元に社内の緊急連絡が入っていたのだ。
”NACHOアライアンス全社員に通達
Jita4-4 ポイントC-2305YFに集合。詳細は現地にて”
そう、Call To Army(全軍招集)だった
”また大きな仕事になりそうだな・・・”
満更でもない表情で彼はそう呟きながら、漆黒のNew Edenの闇の中へと消えていった。
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